Vol.1 加賀ゆびぬきの物語

ひと針に込めた願い「加賀ゆびぬきの物語」

古くから日本で愛されてきた伝統手芸の数々と、それを支える産地の道具や職人の技。 知っているようで知らなかった「日本独自の手しごと」の背景にあるストーリーを紐解き、現代の暮らしに馴染む楽しみ方を再発見していくシリーズです。

 

今回は、「加賀ゆびぬき」の物語をお届けします。手元を彩るリングのように美しく、絹糸の緻密な幾何学模様が宝石のようにきらめく伝統工芸です。 




「知らなかった!」が見つかる、伝統の起源

加賀ゆびぬきは、江戸時代中頃の金沢にその起源があると伝えられており、 当時、お針仕事をなりわいとしていた女性たちが、貴重だった絹糸の余りを大切に使い、自分たちの道具を手作りしたのが始まりと言われています。

当時の絹糸は、加賀友禅をはじめとする上質な着物を仕立てるための貴重な素材でした。武家や裕福な商家のために用いられる最高級の素材であり、お針子たちが自由に使えるものではありません。だからこそ、わずかに残った余り糸ですら愛おしみ、無駄にはしませんでした。
限りある素材を最後まで慈しみ、美しいものへと生まれ変わらせる。その精神は、現代のサステナブルなものづくりにも通じています。

芯材は「厚紙と真綿、そして端切れ」だけで土台が作られています。かつての女性たちは、使い古した着物や生活の端々で出た廃材を再利用し、そこに色鮮やかな絹糸を幾重にも重ねることで、実用性と息をのむような美しさを兼ね備えた道具へと昇華させたのです。



美しい模様に込められた「知恵と願い」

ゆびぬきを彩る緻密な幾何学模様。これらは単なる装飾ではありません。「鱗(うろこ)」「青海波(せいがいは)」といった伝統的な模様には、厄除けや家内安全、永遠の幸せへの願いが込められています。その願いがこの小さな円の中に凝縮されているのです。 


「歴史」を今の暮らしに。現代の楽しみ方

かつてはお針仕事の必需品だったゆびぬき。現代ではその美しさから、指にはめるだけではない楽しみ方が広がっています。

例えば、革紐を通してペンダントトップとして身にまとう。雛人形の傍らにそっと飾りを添える。あるいはお守りとして持ち歩く。

Cohanaの「とんぼ玉の待針」「淡路瓦の針やすめ 」と並べて、デスクの一角を彩るオブジェとして愛でるのも素敵です。 

時代を経て形を変えながらも、一針一針に込められた「手しごとを愛する心」は、今の私たちの暮らしにも静かに寄り添ってくれます。


もっと知りたい!現代の作り手の物語

この伝統技法に魅了され、現代の感性で新たな息吹を吹き込んでいる方がいらっしゃいます。手芸の世界でいきいきと実り豊かに活躍される「人」にフォーカスする連載企画『Cohana and Ninigi』

伝統を受け継ぎながら、ハンドメイドに恋して生きる志知 希美(しち のぞみ)さんのインタビューをご紹介します。

(こちらのインタビューは2024年5月に公開されたものです。)


皆様の今日の手しごとが、より豊かなものになりますように。